見るだけじゃなかった!新宿ホテヘル店②
驚きの講習、その内容
ホテルに着いた店長は慣れた所作でフロントのおじさんに挨拶し、鍵を受け取った。
異様に狭いエレベーターで上の階へと昇っていく、私と店長。
部屋の中に入るよう促されると、何とも言えないカビ臭さが鼻についた。
この後いろんなホテルに行くようになるんだけど、古いホテルって大体こんな感じでカビの臭いがするような気がするよ。
「基本的にお客さんがホテルで待ってるから、フロントの人には何も言わずに部屋まで上がってきていいよ。で、チャイムを押してお客さんとご対面…っていう流れになるから。」
チェンジ!って叫ばれたらどうしよう…等とどうでもいいことを考えていると、店長が服を脱ぎだした。
「NANAちゃんも脱いで。まずはシャワー浴びてお客さんの身体を綺麗にしないと。」
腰にタオルを巻いた店長の手には謎の化粧ポーチが。
中にはうがい薬、グリンス(お客さん用の消毒液。強すぎるから女の子は使っちゃダメね)、ローションが入っている。これを毎回お店から持って行くのだ。
なんで私も脱ぐんだろう?腑に落ちない雰囲気が伝わったのか、店長が優しく諭してくれる。
「うち、ヘルスコースもあるんだよ。見てるだけなのはオナクラコース、なんだけど9割のお客さんがヘルスコース選ぶからね。どう?不安?」
店長は本当に優しい人なんだと思う。初めて会った時からそれは伝わっていたし、悪い人じゃないのは分かっていた。この時は素っ裸だけど。
「一人だけお客さん付いてみて、無理だと思ったらやめようか。もちろん、一人分のバックはお支払いします。ヘルスコースなら60分1万円ね。」
色々突っ込みどころはあれど、お金の話をされると一気にアホになる私はとりあえず講習を受けてみることにした。
今までの時給800円のバイトとは訳が違う。
特別貧乏な家庭で育ったわけでも、借金があったわけでもないがお金に対する執着のようなものが異常なのかもしれない。
こういう女の子、風俗には特に多いと思うんだけど何か理由があるんでしょうか。
服を脱ぎ、店長と一緒になってバスルームへと向かう。
お客さんの身体の洗い方、うがいはかならずしてもらうことを丁寧に教えてくれた。
いやらしい視線のようなものは一切なくて、あくまで“仕事”として向き合ってくれているのが分かった私はすっかり安心してしまった。
後になって分かることだけど、こういう店長(講習員)は珍しいんですよ。がっつりいやらしい気持ちになってる人が大半でした。この話はまた今度詳しく書こうかな。
シャワーを終えて、小さなことへの心遣いがいかに大切かを口頭で教わりました。
例えばお客さんの服は綺麗にたたんであげることや、濡れた身体は丁寧に拭いてあげること。できれば密着した状態で。
その時教わったことは9年間のお仕事の中ですごく生きていたと今でも思います。
次はいよいよベッドでの講習です。
見るだけじゃなかった!新宿ホテヘル店①
スカウトの口車に乗せられる
夜の新宿をブラついていると“チャラ男”という表現がピッタリなスカウトに声を掛けられました。
なんだろう、ホストとも少し違う見た目で、ギャル男でもなくて…年齢は23歳だと言っていたな。
第一声は、
「お姉さん、今の店に満足してる?」
でした。何のこっちゃ…と思ってふと足を止めてしまったところからスカウトのトーク炸裂。
私が風俗どころかキャバクラなんかの飲み屋さえも未経験だということを話すと、見るだけでお金になるいいお店があるとのこと。見るっていうのは、男の人が一人でシてるところをね。
バックは30分5000円。まじか…と思ったアホのわたしはホイホイ着いて行ってしまうのでした。本当にアホだな。
超いい人そうな店長と面接、からの講習
連れて行かれたのは無料案内所の地下にあるお店。
女の子専用の出入り口があったのでお客さんに会うことなく店内に入ることができました。
事務所に通され、いい人感が溢れる店長と面接…とはいってもチャラスカウトがほとんど喋ってくれたので、わたしはひたすら頷いたり緊張で強張る顔を無理やり笑わせたりしていました。
その後、風営法がなんとやらで身分証を提出。コピーを取られ急に不安になってくるわたし。
「ちなみにこの後体験入店できるけど、どうかな?」
店長の問いかけに固まるわたし。確かにこの後特に予定はないし、“体験”っていうくらいだからやってみようかな。無理だったら逃げよう…そんなことをぐるぐる考えていました。
「いーじゃん、やってみなよ!終わったら連絡してね~。」
チャラスカウトの一声で無事体験入店する流れになりましたとさ。
っていうかお前帰るのかよ、と思ったけど。
「じゃ、とりあえず講習ね。その後写真撮ったらお客さん付けるから。」
何やら携帯で他の従業員らしき人と連絡を取る店長。
とりあえず講習?なにそれ?見てるだけなのに…?
訳が分からないまま店を出る店長へ着いて行き、新宿の繁華街を数分歩いて辿り着いたのは小汚いラブホテルでした。
続きます。
わたしのこと。
自己紹介的なもの
はじめまして、NANAです。
これまで9年間風俗嬢として働いてきました。
初めは高校卒業してすぐだったかな、スカウトに「見るだけの簡単なお仕事だから」と言われてホイホイ着いていったのがきっかけでこの業界に足を踏み入れました。
街で配ってるティッシュにそんな感じの怪しげな求人がありますよね。ん?今はもうないのかな?
当時はとにかく馬鹿だったので、借金が…とか、生活費が…なんていう理由ではありませんでした。
今となっては貴重な10代、20代を風俗勤務に費やしてしまった。
色々なお店・女の子・お客さんを見てきたなぁと。
良いことも悪いことも沢山ありましたよ、ええ。
これまでの職歴
オナクラに見せかけたホテヘル→イメクラ①→店舗型ヘルス→イメクラ②→格安ソープ→高級ソープ
の流れです。ザ・転々虫でした。
最後に勤めていた高級店では運よくナンバー2にまでなれ、十分に貯金もできたので風俗を上がることができました。まあそのお金のほとんどは元旦那に持っていかれることになるんですがね。
当時のお客さん、個性的な人が多かったな。誰一人連絡先は残っていませんが感謝してます。
わたしの今
現在は完全に足を洗いまして、フリーでライターの仕事をしています。
風俗で働いていたこと、誰一人として知りません。
だからここに書き残しておこうと思います。ほんとにね、言い方は悪いけどネタの宝庫だから。
それに、今現役で働いている女の子や風俗好きの人とも繋がれたらって思います。いろいろ抱えてる人は多いんじゃないかな。ほら、閉鎖的な世界だしね。
お世話になったお店や女の子、お客さんなど個人の特定に繋がるようなことやはてなの規約に違反する内容は書きません。ていうか、書けません。
そんな感じで今回はおしまい。